手術前の患者さんとご家族に、麻酔科の診療内容の概略をご案内します。予定手術では原則として手術の前日に、麻酔科医が診察に伺い、個別にご説明します。わからないことなどがありましたら、ご遠慮なく担当麻酔科医にお尋ねください。 【麻酔科医の役割】麻酔科医の仕事は、手術の前にカルテで病状を確認し、病室に伺って患者さんを診察することから始まります。手術中は麻酔科医が最初から最後まで患者さんに付き添います。手術中の痛みを取り除くことはもちろんのこと、手術中に起こりうる様々な問題を未然に防ぎ、万が一の時には素早く対処できるように常に備えています。 |
手術室で患者さんを守る麻酔の仕事の他に、ICU(集中治療部)で人工呼吸をはじめとする治療をしたり、痛みの治療なども行なっています。 |
【手術当日の麻酔の流れ】手術の当日は不安を取り除くための薬を使います。小さいお子さんはなるべく眠った状態で、大きいお子さんはお話しができる状態で、手術室に行けるようにしています。 手術室ではマスクを顔にあてて匂いをかいでいるうちに眠ります(吸入麻酔)。マスクにはお好みでバニラ、メロン、イチゴ、パイナップル、オレンジなどの香りをつけておくことができます(市販の調理用エッセンスを使います)。手術中の身体の働きを調べるために心電図や血圧計をつけます。注射が怖いお子さんには眠ってしまってから点滴をします。注射に抵抗がない患者さんでは起きているうちに点滴をして、点滴から眠れるお薬を注射することもあります(静脈麻酔)。 手術によっては、気管に管を入れたり(気管挿管)、部分麻酔(硬膜外麻酔や各種神経ブロック)を行なうこともあります。このような処置は全身麻酔と組み合わせることで眠っているうちに行います。患者さんが痛みや苦しみを感じることはありません。 硬膜外麻酔は、主に腹部や下半身の手術に用います。全身麻酔をした上で、背中から硬膜外腔というところに痛みがわからなくなる薬(局所麻酔薬)を注射します。短い手術では1回だけの注射で終わります。長い手術では細い管を入れておいて薬を繰り返して注入できるようにします。手術の後もこの管を残しておいて、痛みの治療に使うこともあります(硬膜外鎮痛)。神経ブロックは、手術を受ける身体の部位に通っている神経の周囲に局所麻酔薬を注射します。 手術の内容や病気の状態によっては、硬膜外麻酔や神経ブロックなどの部分麻酔ができないことがあります。このような場合は、吸入麻酔や静脈麻酔が中心になります。 手術の後の痛みに対しては、手術の内容や患者さんの状態にあわせて、座薬や飲み薬などの痛み止めや、硬膜外鎮痛、痛み止めの薬の点滴などをします(持続皮下注や持続点滴静注)。 |
【安全な麻酔のために】
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入院時にアンケート用紙をお渡しします。わかる範囲で構いませんので、できるだけ詳しくご記入ください。小さなお子さまへは、ご家族からも手術や麻酔について簡単にお話していただけると助かります。 |
(福岡市立こども病院 副院長、手術・集中治療センター長 水野圭一郎) |
最終更新:2024年4月23日